例えば、メッセージ性の高いポスターを作りたい。
一言のメッセージをはっきりと伝えるために、「カラフルさ」は必要ありません。
真っ白な紙面に描かれた、たった一行のメッセージ。
アイデア次第で、目的を十分に果たし、同時に印刷コストを下げられる場合もあります。
インクや紙の反射を利用したギミック(仕掛け)や、注意して見ないと気がつかないちょっとしたアソビ。
コンピュータ(理論)を使うデザインにおいては、紙にインクをのせた結果を完全に再現はできません。
それゆえ印刷(物理)でのみ表現できる特殊な効果は、印刷工程と結果を知らなければ思いつくことは少ないでしょう。
ここにも、デザインと印刷、理論と物理を兼ね備えているメリットがあります。
ポスターやパネルを屋内に貼り出す場合、光沢のある用紙では、蛍光灯の反射などで見づらくなる場合があります。
使用する場所を想定して、光沢のない用紙を選択したり、
パネルの表面に反射の低いフィルムコーティングを提案します。
手にとってご覧いただくためのリーフレットは、「手触り」が重要。
長期にわたり保存が必要なものなら、「耐久性」が重要。
目的を把握していれば、自ずと素材や方法が明確になります。
環境問題について啓発する、としましょう。美しい木々や自然のイメージ。
「この美しい地球を守りましょう」というメッセージが込められています。
しかし、「啓発」という意味では、これと正反対の手法もあります。
捨てられた粗大ごみ、都心の排気ガス、油まみれの海鳥たち。
決して美しくはありませんが、人々の心に「危機感を持って」と訴えます。
イメージの受け取り方は人それぞれですが、目的を見定めてつくれば、美しいものが必ずしも良いとは限らないのです。